2024.9.6 幼P連役委員会・研修会②

 2024年9月6日に行った京都市学校歴史博物館での研修会の講演内容の紹介です。写真は京都市学校歴史博物館さまより提供、掲載許可をいただいております。

講演:受け継がれる京都市立幼稚園の伝統と特徴-歴史から見えるその保育の現代的意義―

講師:京都市学校歴史博物館学芸員 林潤平氏

 2021年に企画展示「京都における幼稚園のあゆみ」を開催するにあたり、館として京都市立幼稚園について過去の調査内容をもとに再度詳しく調査を行い、現在の京都市立幼稚園での教育実践に注目すべき特徴と現代的意義をもたらしている歴史を知ることができた。

京都市立幼稚園の伝統と特徴として

➀隣接の小学校及び地域と非常に密接な関係を持っている

➁幼児教育実践の研究を極めて重視している

③子どもの自由を重んじる風土がある

が挙げられる。

 まず、京都市立幼稚園の源流は明治8年12月に柳池校の一隅に男女共学の「幼稚遊嬉場」を開設したことであるが、これは日本初の幼稚園(東京女子師範学校附属幼稚園)より約1年早いものであった。その後、明治37年に市長より幼稚園を発達させる目的で市内公立幼稚園を「小学校附設幼稚園」に改めると通牒された。背景として戦前期の京都の小学校は学区に住んでいる人たちも学校運営に協力していたために、学校と地域の繋がりが非常に強かったことに由来する。学区と深い関係を持つ小学校に学びながら、幼稚園も学区と深い関係を持つようになり、この歴史の中で培われたものが120年経った現在も京都市立幼稚園に継承されている。

 京都は地域と密接すなわち世代間対話の機会が充実し、地域の人々からの協力により幼稚園としての歴史上において「幼稚園の名門」と位置づけられている。こうした位置づけを与えられる上で欠かすことができなかった要因の一つに、京都市保育会の長年の活動があり、京都市保育会を中心に「学び続ける態度が大切である」という園の文化を形成し今でも活かされている。また、学問都市で大学の先生から手軽に研究について学べる環境にあり、先生が身をもって「学び続ける姿」を子どもに伝えていくことができた。同時に子どもたちの自由と個性を重んじる風土が出来上がっていったのは京都市には数多くの寺社が存在するため、園外保育として境内を利用する傾向にあり、そこでの自由に身体を動かしたり、自由に遊んだりする活動が心身の成長に繋がった。子どもの自由と個性を重んじる特徴は子どもにも多様性の尊重を身につける機会となり、社会が持続するために不可欠なパートナーシップへと繋がっていく。

 2025年は柳池校に幼稚遊嬉場が出来て150周年の節目にあたり、京都市の幼児教育150周年ともいえる。この記念に調査が進み、京都市立幼稚園の新たなる一面が発見されればその歴史的意義はさらに深められるかもしれない。

(幼P連)